疲れ目を軽くみてはいけない
集中しているときは、時間も忘れて手元の細かい作業をしたりパソコン操作に没頭したあとなどに、よく目の疲れを感じます。しかしこの疲れには運動後、筋肉が疲労したときに出る「筋肉痛」のように具体的な症状がないため、どこかあいまいな印象を受ける異常です。
そのためでしょうか、特に対策を講じることもなく、「疲れ目」をそのまま放置している人も多いようです。しかし、単なる疲れ目だろうと思える症状も、すぐにも治療を始めなければならない目や全身性の病気が発するシグナルであることがあります。
また、少し休めば消える程度の疲れ目も、放置すると深刻なトラブルに発展することがあります。たとえば、長時間細かいものを見続けたあとに起きる疲れ目は、目のまわりの筋肉をマッサージなどでリラックスさせたり、十分な睡眠をとることで解消できるのがふつうです。しかしそのつど解消していかないと、しだいに疲労感があらわれやすくなり、症状が重くなっていきます。
こうなると、目の異常だけにとどまらず、頭痛や首・肩のこり、全身の倦怠感、微熱、不眠など、「眼精疲労」とよばれる全身症状があらわれたり、目が極度に乾く「ドライアイ」という症状を引き起こすのです。今、こうした目のトラブルが急増して問題となっているこの2つの異常は、いったいどのようなものなのでしょうか。
目の疲れが引き起こす全身の異常「眼精疲労」とは?
眼精疲労とは、目に疲れがたまることで頭痛やくび、肩のこり、微熱など全身にさまざまな症状を引き起こすトラブルです。目をひどく疲れさせる原因は多種多様で、特定できないことも多いのですが、だいたい4つに分類することができます。
- 調整機能の低下目の筋肉疲労が原因で、焦点を合わせるのに必要な調節機能が低下するために起こる疲労。ものを見ようとしても、ぽやけたりかすんだりする
- 筋肉の働きの異常眼球を動かす筋肉(眼筋)に疲労がたまり、眼球を正しい位置に動かすことができなくなるために起こる疲労。近くのものが見づらくなったり、ものがだぶって見えてしまう。
- 視神経の疲労目を酷使しすぎて、目の筋肉だけでなく、視神経のはたらきが悪くなって起こる疲労。最近は、パソコン利用者に眼精疲労が急増しているが、これは長時間ディスプレイ上の光と色の刺激を視神経が受け続けるために起こる。
- ほかの病気による結膜炎やものもらい、白内障、緑内障といった目の病気のため、目の組織にかかる負担が増す結果あらわれる疲労。この場合、原因となっている病気を治療しなければ、眼精疲労の症状も解消されない。糖尿病や高血圧、動脈硬化、心臓病、肝臓病など、最近増えている生活習慣病は、眼精疲労を起こしやすく、逆に眼精疲労からこうした病気が発見されることもある。