うつ病 がすすむと「いっそ死んでしまいたい」という気持ちが強く出ることがあります。これを「希死念慮」あるいは「自殺念慮」といいます。適切な治療や対策を施さないと、自殺未遂をしたり、本当に自殺してしまうケースもあります。
「自分はダメな人間だ」「周囲に迷惑をかけて申し訳ない」「生きていてもつらいばかりだ」といった自責感や罪悪感にさいなまれ、生きる意欲自体がなくなってしまいます。そのサインとして「死にたい」と漏らすようになるので、家族や友達、周りの人などはこのサインを見逃さないようにしなければなりません。
「死にたい」と口にするなら
【母親を亡くした Aさんの場合】
そもそも うつ病 は、脳内神経伝達物質の動きが鈍くなって起こる病気です。「死にたい」とまで思いつめている人は、すべてのエネルギーが消耗してしまい、脳内神経伝達物質もその役割を果たさなくなっている状態です。
Aさんのように、母を亡くすなどのような大きな喪失体験は、深刻な うつ病 を引き起こすきっかけになります。もちろん、家族や恋人など、親しい人の死に直面したすべての人が死にたくなるわけではありません。Aさんの場合には、職場でのストレスや性格など、うつ病になりやすい要因があったと考えられます。「死にたい」とまで思いつめるケースでは、死んだらラクになると考えたり、発言したりする人が多くいます。しかし、死ねばラクになる保証はどこにもありません。
むしろ、生きていさえすれば今よりよくなる保証がある、と考えるほうが自然です。そうはいっても、本人は冷静に考える力を失っているのですから、このような思いにとらわれたら、迷わず、一日も早く専門医を受診しましょう。
周囲の人は SOS のサインを見逃さないようにする
家族や友人が異変に気づいたときも、自分たちの力だけで何とかしようとムリをせず、医療の力を借りることです。「死にたい」という言葉は SOS の証し。「助けて」と叫んでいるのです。また、「死にたい」というストレートな言葉だけではなく、周囲の人が気づきやすいサインとして、「私がいてもみんなの迷惑になるだけ」「私なんかいなくなったほうがいい」というような自分を責める発言にも注意が必要です。家族や職場の人とほとんど口を聞かなくなった、食事をしなくなった、極端に食欲が減った、部屋に引きこもる、身の回りの整理をしているなどの行動も要注意です。
これらの発言や行動の裏には、自殺をしたいという思いが隠されている可能性が高いからです。友人の立場で「死にたい」と相談されたら、専門医の受診を勧め同行してあげてもよいでしょう。ただ、深刻な状態なら、親しいからといって抱え込まず、早めに家族に伝えてください。生死にまつわる状況が絡む場合、最終的に責任をもって支えるのは家族だからです。病院で抗不安薬などを処方してもらえば、とりあえず精神的に落ち着きますが、基本的には入院による治療が必要になります。
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