うつ病は「気が弱い」からかかるわけではありません。じつは脳のエネルギーともいえるバッテリー切れともいえる脳内神経伝達物質が不足している状態です。
脳内には心を前向きにする物質が分泌きれている
私たちはなぜうつ病にかかるのでしょう? 気が弱い、心が弱い性質だからでしょうか。じつは、うつ病は脳内の物質が不足して起こる病気で、気の持ちようでかかったり治ったりするものではありません。
私たちの脳の中には、約1000億個ものたくさんの神経細胞(ニューロン)があります。これらが複雑なネットワークをつくり情報を伝達しているのです。
その結果、私たちは喜怒哀楽を表現したり、ものごとを考えたり判断したりします。この情報を伝達するときに、大切な役目をもつのが脳内の「神経伝達物質」。
神経細胞同士の間にはほんの少しすき間があり、神経伝達物質が細胞から細胞へと動き、「おいしい」「痛い」などの情報を運んでいます。
神経細胞のネットワークの中では、これらの神経伝達物質がバランスよく分泌され、そのおかげで脳はスムーズに働いているのです。こうした脳内神経伝達物質には、気分を明るくする「セロトニン」や、やる気を起こさせる「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」などがあります。
大きなストレスが神経伝達物質の量を減らす
ところが大きなストレスの影響を受けると、脳内神経伝達物質が減ってバランスが崩れてしまい、脳はエネルギー不足に。思考や感情の働きも鈍くなりうつになってしまいます。
車にたとえるならバッテリー切れになった状態です。バッテリーが切れた車にたくさんガソリンを入れても動きません。同じように、脳がバッテリー切れを起こすと、気分転換や周囲の励ましだけで明るい気分を復活させるのは無理。
積極的な活動はおろか日常生活もスムーズにいかないでしょう。こうなったら、心身をしっかり休ませ、脳内神経伝達物質のバランスを正常な状態に戻す抗うつ薬などを利用して、きちんと医学的に治療するのが回復の早道です。
脳がエネルギー不足って、どんな状態なの?
「ぉいしい食事」をすると、脳内神経伝達物質が分泌され、「おいしい」という情報を、神経細胞から神経細胞へと伝えていきます。
うつ病の人は、その脳内神経伝達物質の量が減り、神経細胞の働きも鈍くなり、情報が伝わりにくくなっている状態なのです。