うつ によって起こる 動悸 息苦しさ
【Yさんの場合】
派遣社員として新しい職場に入ったYさん。これまではごくごく順調だったのですが、今度の職場では、派遣はYさんひとりしかいませんでした。
女子社員同士の結束が思った以上に固く、派遣のYさんには誰も声をかけてくれません。ランチタイムも無視されて、ひとりぼっちです。
この1ヶ月は通勤電車に乗ると急に息苦しくなり、心臓がドキドキして、途中で降りてしまい遅刻したこともあります。今朝は、駅の近くに行くだけで動悸がおさまりません。結局、電車に乗れず、ついに会社を休んでしまいました。
心臓や呼吸器に特別な病気もなく、恐ろしい目にあったわけでもないのに、動悸や息切れ、息苦しさ、めまい、手足や体のふるえなどに突然見舞われることがあります。
こういった体の症状が5~20分程度続くのが パニック発作 です。発作が起こると、死んでしまうのではないかといった強い不安に襲われ、さらに発作を繰り返す 『 パニック障害 』 になり、ときには救急車で運ばれることもあります。パニック障害 の詳細はこちら
こうした症状は、脳内神経伝達物質のノルアドレナリンが過剰に分泌されたために起こる状態。ノルアドレナリンはストレスを感じたときに分泌され、神経を興奮させます。
発作を何度か経験すると、今度は「電車に乗ったらまた発作が起きるのでは」と思うようになり、通勤とは関係なく電車に乗ること自体が恐怖になってしまいます。そして、電車だけではなく、エレベーターや映画館など狭い空間がダメと、不安対象の場所が広がってしまう場合もあります。こうなると、何に対しても自信がなくなり、消極的になり、最悪の場合は引きこもりがちになり、退職に追い込まれかねません。
ほうっておいて回復できずにうつ病になってしまうこともあります。パニック発作は、心臓発作に似ているので、発作が起きたときに死んでしまうのでは? と強い不安をもつ人が多くいます。でも、この発作で死んでしまうことはないので、安心してください。発作を繰り返すようなら、専門医を受診し、抗不安薬や抗うつ薬で気持ちを落ち着けます。
パニック障害 は治療をすれば、必ず治ります。薬がよく効きますから、 うつ病 になる前に対処すれば、通常は6ヶ月くらいの治療で済むでしょう。
電車に恐怖を感じているなら、家から駅前のポストまで行く、駅に行く、電車に乗るというように、少しずつ段階を踏んでならしていくとよいでしょう。
ひとりで頑張りすぎない
専門医を受診すれば、さまざまな療法を指導してくれます。
同時に、職場の問題などが背景にあるなら、それを解決することも大切です。Yさんのように、派遣社員ということで孤立感を感じているなら、自分で引いた境界線を取り払い、勇気を出して自分から声をかけてみましょう。こちらが好意を示せば、相手が変わる可能性も大きいです。もちろん、どうしても改善されなければ、ムリはせず、派遣元に相談して派遣先の職場を変えてもらいましょう。
頑張りすぎからパニック発作が起こることもありますが、睡眠中に突然、不安に襲われドキドキするのもパニック発作のひとつです。
気力、体力ともに全開で頑張っているため、緊張状態が続き発作が起きるのです。一生懸命、仕事に取り組んでいるのに周りから評価されない、それどころか苦情まで言われるのはつらいことです。通勤はできていても、発作が繰り返し起こるようなら、専門医で適切な薬を処方してもらいましょう。
仕事の場では、100 % の力で取り組んだ仕事が、そのまま 100 % と評価されることはなかなかありません。多くの人から認めてもらうには、120% の頑張りが必要かもしれません。でも、いつも120% の頑張りでは、当然心身ともに疲れきってしまいます。完壁でなくともよいと割りきる姿勢も大切。心の余裕を残しておきましょう。