質のいい睡眠のための条件 > 2018年 > 1月

睡眠不足は能力の低下の原因になる

睡眠不足は能力の低下を招く

前頭葉と「知性」「人間らしさ」の関係がポイントになる

一時期や流行した「脳トレ」。ドリルや百マス計算、数独、ニンテンドーDSなどのソフトなど。脳を鍛えたいと思っているひとはいつの世も多いようです。

脳のトレーニング部位としていちばん人気があるのは、前頭葉です。前頭葉とは、文字どおり大脳の前のほうにある、額のうしろあたりの部分です。この前頭葉の役割を、前頭葉に障害を被った実在する症例から見ていきましょう。

実物を見る機会がなかったのですが、ハーバード大学に興味深い人間の頭蓋骨が置いてあります。前頭葉に大きな穴が開いている骸骨で、脳科学に携わっている人間で知らないひとがいれば、モグリといっていいくらい有名です。

この頭蓋骨は、フィネアス・ゲージというひとのものです。1848年に工事用のダイナマイトが爆発し、太さ約3センチ、長さ約1 メートルの鉄の棒が、ゲージさんの頭蓋骨を突き破って、前頭葉を貫通してしまったのです。

幸い生命はとりとめたのですが、この負傷から回復したあと、彼はまったく「人が変わって」しまいました。前頭葉のダメージにより、親切で有能、勤勉な性格から一転して、短気で慈りっぼい人格に変化してしまったのです。

このように、前頭葉には「人間を人間たらしめる」重要な機能が揃っています。知性、意欲、倫理観、情緒、思考、理性、遂行能力などなど、前頭葉機能を指す用語を挙げると、枚挙に暇がありません。もちろんどれもビジネスに大切な能力ですが、ここでは特に遂行能力に注目してみましょう。

前頭葉のはたらきが阻害されると料理が下手になる?

カナダの脳外科医、W・ペンフィールドは脳の研究・治療に携わっていて、知らないひとはいないといっていいくらい有名です。彼は大脳皮質に電気刺激を与え、大脳皮質の中で手の動きは脳のどの部分で、足の感覚はこの部分… …と詳細に調べ上げ、「脳の地図」を作り上げたひとです。

その脳外科医のペンフィールドのお姉さんの前頭葉に、ガンが見つかりました。前頭葉にできた腫瘍の切除手術を行って一命を取り留めましたが、大きな後遺症が残りました。

なんと彼女は得意だった料理が、できなくなってしまったのです。料理というのは、実はなかなかに高等で複雑な作業です。献立を考え買い物をし、調理をするわけですが、調理の手順も大切です。盛り付けや飲み物とのマリアージュなどにも気を配らねばなりません。

だからこそ、この女性は、前頭葉障害によって料理という順序だった行動の組み立てもできなくなってしまったのです。同時進行でも行うには、前頭葉が関係する「ワーキングメモリ」という記憶構造が関わっています。

ワーキングメモリとは、一時的に情報を記憶する機能なので、何かをしながら、同時にはかの情報処理も行うことが可能です。たとえは乱暴ですが、コンピューターのメモリに似ています。あまり多くの情報処理を同時に行っていると、重くなってフリーズします。

ワーキングメモリは寝不足だとうまくはたらかない

さて、睡眠不足になると、前頭葉機能の中の「ワーキングメモリ」はどうなってしまうのでしょうか?睡眠とワーキングメモリについての研究では、シンガポールのデューク・ナショナル医科大学のマイケル・チ一教授の研究室が世界的に有名です。

彼は機能的MRIという画像検査を使って断眠研究を行っているのですが、断眠させるとワーキングメモリははたらかなくなってしまい、前頭葉の活動も落ちてしまうという研究結果を、多くの学術雑誌に発表しています。

断眠グループでは、前頭葉の活動性は落ちてしまっています。このように、睡眠不足の状態では、前頭葉の重要な機能である「ワーキングメモリ」のはたらきが低下してしまいます。料理などの家事、ビジネス、それにわたしの仕事である医療も、ワーキングメモリが十分にはたらかないと、致命的です。奥さんの寝不足でどはんがまずくなる、というのも、科学的にはありうることなのです。

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夜しっかり熟睡すればするほどパフォーマンスはあがる

昼寝

深い眠り=「徐波睡眠」の重要性に注目

質のいい睡眠、質の悪い睡眠、浅い眠り、深い眠りとひとくちにいいますが、実際に眠りが浅い深いはどう判定しているのでしょうか?

ウトウトしている、あるいはたたかれたり、揺すられてもなかなか起きない、などという表現では客観的とはいえません。睡眠の深さの指標はなんでしょうか?

正解は、脳波です。では、脳波について説明しながら、深い睡眠とはなにかを探っていきましょう。

人間が起きているとき、特に起きていて目を閉じているときは、8ヘルツから13ヘルツのアルファ波という波形が連続して出現します。10ヘルツというのは、1秒間に波の山が10個あることを意味するので、遅い波ほどヘルツ数が少なくなっていきます。

眠くなると、このアルファ波がだんだんなくなっていきます。いちばん軽い睡眠で、ノンレム睡眠の第1段階です。脳波がさざなみに似ているのでさざなみ期ともいいます。

そしてその後、15ヘルツ前後の速い波が1秒間ほど続けて出はじめます。波形が糸巻き、つまり紡錘に似ているので、睡眠紡錘波(スピンドル)といわれます。これが見られたら、ノンレム睡眠・第2段階です。

さらに睡眠が深くなっていくと、2~3ヘルツの遅い、携り幅の大きな波が現れます。これが、遅い波、すなわち「徐波」というもので、英語ではslow waveです。これが30 秒間で20 %以上50 %未満の出現量ならば、ノンレム睡眠・第3段階、半分を超えるとノンレム睡眠・第4段階です。

このあとレム睡眠が現れ、これでひとつの睡眠サイクルとなります。この、ノンレム睡眠の第3段階と第4段階とをまとめて、徐波睡眠といいます。2~3 ヘルツの遅い大きな脳波が出まくっている状態です。以前はレム睡眠ばかりが注目され、この深い睡眠はあまり重視されませんでした。

ビッグウェーブで記憶力がアップ

徐波睡眠が記憶の整理・統合と関係あるのではないかという仮説は、ドイツ・リューベック大学の研究からはじまりました。単語ペアの記憶実験を行い、徐波睡眠の出現圭の多い前半部の睡眠をとったグループのほうが、記憶の再生率が高いという結果を得ました。

その後も徐波睡眠と記憶増強との関連を支持する研究結果は少なくありません。アメリカ・ウィスコンシン大学も徐波睡眠を積極的に研究しています。運動に関する記憶、すなわち手続き記憶についての研究が行われています。

コンピューター画面上で点滅する円をマウスで追いかける実験を睡眠前後で行ったのですが、徐波睡眠が長いほど、また徐波の振れ幅が大きいほど、成練は良かったという結果でした。

この論文は、2004年の「ネイチャー」誌に掲載され、手続き記憶の固定が徐波睡眠中に行われることを示す重要な論文となっています。

論文の話ばかりしてしまいましたが、難しく考える必要はありません。つまりは筋肉と同じで、脳もよく休むほどよく覚えられる、というシンプルな仮説であり、結論です。頑張って学習して経験した分、休息もそれだけ十分に必要なのです。

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眠りよりも優先 普段の生活においては頻繁にある

眠りよりも優先 普段の生活においては頻繁にあります。生活をしていると睡眠が大切だとはわかっていてもどうしても眠りより優先しなければいけないことがたくさんあります。日本は睡眠時間の短さでは、常に世界のトップクラスをキープしています。日本、韓国、台湾、そしておそらく北京や上海、香港など中国の都市部も、同じようにショートスリーパーの生息する地域といえます。

眠りよりも優先 してしまう生活を見直す 人生の3割は睡眠時間

睡眠は、からだだけでなく、脳やこころにとっても睡眠は重大な役割を果たしています。一時期、なるべく睡眠時間を削って勉強時間を捻出し、自分をランクアップしよう、といった内容の本がとてもよく読まれましたが、最近では睡眠時間をしっかりとって効率を上げたほうが、学習効率がいいという意見が主流です。

睡眠と集中力は密接に関係しています。睡眠不足になると、集中力が低下し、注意力散漫になり、ミスをしやすくなります。また、睡眠不足は、学習や記憶にも悪影響を及ぼします。

睡眠は、脳を休ませ、脳の機能を回復させるために必要です。睡眠中に、脳は、その日にあった出来事や情報を整理し、記憶に定着させます。また、睡眠中に、脳は、疲労物質を排出し、新陳代謝を促します。

そのため、十分な睡眠をとることは、集中力を高め、学習や記憶を向上させるために重要です。

「ワーク・ライフ・バランス」を考える際にも、睡眠を軽視することはできません。十分な睡眠は、仕事や勉強の効率を上げるのみならず、自分とまわりの人生を豊かにしてくれます。大げさではなく、睡眠にはその力があるのです。

個人差はありますが、人生の3分の1は、睡眠です。平均寿命で考えると、一生のあいだにだいたい25年間は、眠っていることになります。これをないがしろにするなんて、大変な過ちだと思いませんか?

コンビニと夜間照明が眠れない人を増やしている

にもかかわらず、日本は睡眠時間の短さでは、常に世界のトップクラスをキープしています。

日本、韓国、台湾、そしておそらく北京や上海、香港など中国の都市部も、同じようにショートスリーパーの生息する地域といえます。

経済協力開発機構(OECD)が2009年にまとめた報告では、調査対象18国の中で、睡眠時間が最も短いのは韓国(469分)、次いで日本(470分)でした。

韓国と日本だけが、平均睡眠8時間未満だったことになります。余談ですが、短時間睡眠の国々に出生率の低い国が数多く含まれている事実は興味深いものがあります。日本に的を絞れば、平成23年に発表されたNHK放送文化研究所による調査では、日本人の平日の睡眠時間は7時間14分でした。

睡眠不足は出生率に影響を与える可能性があります。睡眠不足になると、排卵が抑制され、妊娠しづらくなります。また、睡眠不足は精子の質を低下させ、妊娠率を下げる可能性があります。さらに、睡眠不足はストレスや不安などのホルモンを分泌させ、妊娠しにくくする可能性があります。

睡眠不足は、妊娠を希望する女性にとって、避けるべきことです。妊娠を希望する女性は、7~8時間の睡眠を心がけましょう。

ちなみに昭和35年の調査では8時間13分ですので、約50年で睡眠時間は約1時間も減ってしまったことになります。特に男女40代での睡眠時間の減り具合に著しいものがあります。

日本人は、眠れなくなってきているわけです。眠れなくなっている背景には、テレビやインターネットの普及もあるでしょうが、労働状況が変わってきていることが考えられます。

サービスの24時間化、看護や介護のようなシフトワークの仕事が増えていることなど、働き方が変わってきていることも関係しているでしょう。

夜の便利さと明るさも大きな要因です。海外に行くと、ニューヨークやロサンゼルスといえども、夜は東京ほど便利で明るくはありません。かたや日本ではコンビニがたいていどこにでもあり、夜中だろうと、ほとんど何でも買える便利な状態です。

これでは、早く寝るというドライブがかかりません。蛍光灯やネオンを使った照明餅主流なのも、街が明るい原因のひとつでしょう。夜の過剰な明るきは、睡眠リズムの乱れを生じさせ、夜の眠りにくきさにつながります。

一方、アメリカやヨーロッパでは白熱灯で間接照明を用いるなど、夜の照明は抑え気味です。わたしもマネをして、自宅は間接照明をメインにして蛍光灯は使っていません。

間接照明とは、壁や天井、床に光を当て、反射光で空間を照らす照明です。直接照明に比べて、柔らかい光で、空間を広く見せることができます。また、間接照明は、直接照明に比べて、目に優しいので、リラックスできる空間を演出することができます。

寝る時間があったら有効活用したい、というせっかちな性格にも原因があると思います。キリスト教やイスラム教圏では、夜はむしろ安息を取るという意義が大きいように思います。家族といっしょの時間と睡眠時間とを削って、仕事に打ち込む、勤勉で強迫的な傾向は日本人のいいところでもあり、よくないところでもあります。

ちなみに、食事と睡眠にもっとも時間を費やす国民はフランス人です。睡眠時間は8時間50分、食事の時間は135分程度。ワインとともにおいしい食事を摂って、そのあとはゆっくり睡眠。このスローライフの精神を取り入れられれば、日本人も心理的にもっと余裕を持てそうです。

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頭がさえる眠り方