人生の3割は睡眠時間
睡眠は、からだだけでなく、脳やこころにとっても睡眠は重大な役割を果たしています。一時期、なるべく睡眠時間を削って勉強時間を捻出し、自分をランクアップしよう、といった内容の本がとてもよく読まれましたが、最近では睡眠時間をしっかりとって効率を上げたほうが、学習効率がいいという意見が主流のようです。
「ワーク・ライフ・バランス」を考える際にも、睡眠を軽視することはできません。十分な睡眠は、仕事や勉強の効率を上げるのみならず、自分とまわりの人生を豊かにしてくれます。大げさではなく、睡眠にはその力があるのです。
個人差はありますが、人生の3分の1は、睡眠です。平均寿命で考えると、一生のあいだにだいたい25年間は、眠っていることになります。これをないがしろにするなんて、大変な過ちだと思いませんか?
コンビニと夜間照明が眠れない人を増やしている
にもかかわらず、日本は睡眠時間の短さでは、常に世界のトップクラスをキープしています。
日本、韓国、台湾、そしておそらく北京や上海、香港など中国の都市部も、同じようにショートスリーパーの生息する地域といえます。
経済協力開発機構(OECD)が2009年にまとめた報告では、調査対象18国の中で、睡眠時間が最も短いのは韓国(469分)、次いで日本(470分)でした。
韓国と日本だけが、平均睡眠8時間未満だったことになります。余談ですが、短時間睡眠の国々に出生率の低い国が数多く含まれている事実は興味深いものがあります。日本に的を絞れば、平成23年に発表されたNHK放送文化研究所による調査では、日本人の平日の睡眠時間は7時間14分でした。
ちなみに昭和35年の調査では8時間13分ですので、約50年で睡眠時間は約1時間も減ってしまったことになります。特に男女40代での睡眠時間の減り具合に著しいものがあります。
日本人は、眠れなくなってきているわけです。眠れなくなっている背景には、テレビやインターネットの普及もあるでしょうが、労働状況が変わってきていることが考えられます。
サービスの24時間化、看護や介護のようなシフトワークの仕事が増えていることなど、働き方が変わってきていることも関係しているでしょう。
夜の便利さと明るさも大きな要因です。海外に行くと、ニューヨークやロサンゼルスといえども、夜は東京ほど便利で明るくはありません。かたや日本ではコンビニがたいていどこにでもあり、夜中だろうと、ほとんど何でも買える便利な状態です。
これでは、早く寝るというドライブがかかりません。蛍光灯やネオンを使った照明餅主流なのも、街が明るい原因のひとつでしょう。夜の過剰な明るきは、睡眠リズムの乱れを生じさせ、夜の眠りにくきさにつながります。
一方、アメリカやヨーロッパでは白熱灯で間接照明を用いるなど、夜の照明は抑え気味です。わたしもマネをして、自宅は間接照明をメインにして蛍光灯は使っていません。
寝る時間があったら有効活用したい、というせっかちな性格にも原因があると思います。キリスト教やイスラム教圏では、夜はむしろ安息を取るという意義が大きいように思います。家族といっしょの時間と睡眠時間とを削って、仕事に打ち込む、勤勉で強迫的な傾向は日本人のいいところでもあり、よくないところでもあります。
ちなみに、食事と睡眠にもっとも時間を費やす国民はフランス人です。睡眠時間は8時間50分、食事の時間は135分程度。ワインとともにおいしい食事を摂って、そのあとはゆっくり睡眠。このスローライフの精神を取り入れられれば、日本人も心理的にもっと余裕を持てそうです。