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よく考えているときには「シータ波」が出ている?

考えているときはシータ波がでている

海馬シータ波と記憶の関係

「アルファ波」や「ベータ波」という言葉を聞いたことがあると思います。人間の脳波に見られる、波形のタイプのことです。

この波形の周波数の違いによって、アルファやベータなどの名前が付きます。

たとえば1秒間に8回波の山があると、8ヘルツとなります。
起きているひとの後頭部に通常見られるアルファ波は、8〜13ヘルツです。ここで説明するシータ波というのは、アルファ波よりちょっと遅い4〜8ヘルツの波です。

ひとつの山だけでなくいくつか連続して出現するのが特徴で、シータ律動(シータ・オシレーション)ともいいます。

シータ波と学習についての研究は、動物実験からはじまりました。ちょっと痛々しいのですが、ネコやラットなど動物の脳、主に海馬に針のような電極を刺して、活動中の脳波を観察するのです。

1950年代の研究で、学習や記憶に海馬のシータ波が関係しているのではないかという報告が相次ぎました。またこの海馬シータ波が、海馬の歯状回というところで行われるシナプスの長期増強という現象と関係があるのではないかという仮説が立てられました。

シナプスの長期増強とは、高い頻度で刺激するはど、シナプス伝導が長期にわたって強く持続するようになるという現象です。単純にいえば、よく練習するはどよく覚えられる、というところでしょうか。

高度な課題中は大脳にシータ波が出ている

「動物ではシータ波はあるらしいけど、人間ではどうなの?」と思われたかたも多いと思います。人間でも計算などの作業中に脳波を記録すると、大脳の正中部にシータ波が出ることが知られています。

ただ、頭の表面に装着する通常の脳波計では、大脳皮質の活動はわかっても、脳の深いところにある部位の活動を観察するのは至難の業です。

実際に脳の奥にある海馬がどういう脳波を出しているかは、海馬に電極を直接付けないとわかりません。そんなことができるのでしょうか?

正常なひとでは不可能ですが、てんかんの患者さんの協力を得れば可能です。てんかんとは脳のある部分が異常な電気を発してしまい、けいれんや手足が勝手に動くなどの症状が出る病気です。

これまでのてんかんの治療は、抗てんかん薬による治療が主流でしたが、最近ではてんかんの焦点を手術で取り払ったりする外科治療が注目されるようになってきています。

手術の際にてんかんの焦点を計測するために、脳表面に直接電極を留置します。こうすることで、頭蓋内脳波と呼ばれる脳波が測定できます。一般の脳波は頭蓋骨や頭皮の影響を受けますが、この頭蓋内脳波は脳細胞から直接信号をキャッチすることができます。

頭蓋内脳波を留置した患者さんに、パソコンでのバーチャルナビをしてもらい、難しい迷路での進路を考えているときほどシータ波が出現していることを、「ネイチャー」誌に発表しています。

ラットの実験で前頭葉の前部帯状回という場所にも、海馬シータ波と同期している神経細胞があることを発見しました。

まだまだ謎が多い

シータ波は、特に人間ではまだまだわからないことが多い脳波活動です。海馬だけでなく前頭葉にも、それに起きている間だけでなく睡眠中にも、あることがわかってきました。

機能的MRIや遺伝子の研究が全盛の時代ですが、人間の睡眠中の脳の活動を調べるには、やはり脳波計がいちぼん役に立つ検査器具です。

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